僕の宝もの
 
 
 
「ねえ、宗十郎。今日女装しに行ってもいい?」


教室の自分の席に座っていた僕に、周囲に誰もいないのを確認してから、湊はそっと耳打ちしてきた。顔を上げてそっちを見ると案の定、肩身が狭いといったふうに、そのときだけは僕と一切目を合わせずにいる湊の姿があった。


ちなみに、湊のデフォルトは明朗快活だから、僕しか知らないこのギャップは、周知となったら驚かれることだろう。


「うん。いいよ。ちなみに、昨日母親が新作持って帰ってきてた」


「っ!」


声なく歓喜し放課後を待てないといった様子の湊を、僕はどうどうと宥める。


義務教育最後の学年というそれなりに忙しい日中を、僕と湊は学校で過ごし、急かされるように一緒に下校した。


もう、それは小さな頃から続くこと。僕と湊は、お隣さんで幼馴染の同学年という、何処へ行くにも何をするのも一緒な間柄で。

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