ハニーレモンの太陽。
「な……何言ってるの」

「はは、反応うぶだね」




おかしそうに笑うハルくん。
ずっと人を疑いながら生きてきた私にとって、彼の笑顔はとても輝いて見えた。


とても…見たことないくらい。




「ハルくんってさ」

「んー?」

「キラキラしてるね」

「なにそれ〜笑」

「…眩しいもん」

「…ありがと」




「うん」と返した私は、その後に続ける会話を考えていなかった。


どう思ったかな。眩しいなんて、ちょっと恥ずかしいこと言っちゃった。




「あー…美桜…って呼ぶの慣れないから、桧山はさ、」

「ん?」

「…俺が今日転校してきてさ」

「うん」

「すぐ気付いたの?朝の男だって」

「うん。すぐ気付いた。だって…」

「だって、何?」

「髪。同じだから。栗色。」

「あーこれ?生まれつきなんだよね」

「一緒!私も。そのせいで…色々苦労した」

「俺も。先生にさ、何回も"染めたなー!"って廊下追い掛け回されたの」

「ふふっ」

「でもその先生が、別の先生に"生徒の前で廊下を走らないでください!"って怒られてた」




「その隙に俺は逃げたけどね!」と自慢気に話すハルくん。


明るいな。ほんとに。ハルくんは。

名前で呼ばれなくなったことに少し寂しくなりながら、そう考える。


日奈や柘植くんと似てる。
人懐っこくて、表裏がなさそうな…。


どこか、信じられる気がする。



「美桜って綺麗な名前だよね」

「え?」

「美しい桜。…合ってるよ、桧山に。」

「へ……?」

「…いい名前、ってこと」

「あ、ありがとう…ハルくんも、合ってるよ。
悠陽って。ハルくん、太陽みたいだから」

「俺が?太陽?」

「うん。」

「俺が太陽なら君は月だね」

「え?」

「俺が好きな歌の歌詞!笑」

「あ、なんだ笑」




何気ない会話でこうして心から笑えるのは
日奈と柘植くんを除けば初めてのことだった。
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