【完】さつきあめ〜2nd〜

「朝日くんは小さい頃は違うお家に預けられてたの。
綾ちゃんと一緒で光くんとは兄弟なんだよ
今日から一緒のお家で暮らすんだよ、仲良くしてね」

事情はいまいちわからなかったけれど、この家で唯一優し気な微笑みを称えて、俺たちに優しく触れていたユキさんが俺は好きだったから、思ってもいな言葉を口にした。

「うん!わかった!」

俺が6歳の時で、兄貴は8歳。
綾はまだ3歳の時だった。
我が家には新しい家族がひとり増えた。 いや、家族扱いなんかされていたのかと聞かれるとそれは疑問だが。

俺の家は一般家庭とは異なっていると気が付いたのは、小学校に上がってからだった。
学校の通学路の川沿いに真新しい家が建ってきていて、そのひとつの家のカーテンがいつも開けられていた。
俺はクリスマスに小さな電灯が飾られているその家を帰り道見つめる事が日課になっていた。
その家にはお父さんとお母さん、そして俺より少し年下の男の子と女の子の兄妹がいた。
小さなリビングで家族が一緒に過ごしていて、お父さんと小さな子供たちはいつも楽しそうに遊んでいて、それを台所から料理をしているお母さんが優し気に見つめていた。

その光景をワクワクしながら見つめていたのを記憶している。
いいなぁ、楽しそうだなぁ。でもその光景がごくごく普通で当たり前だということに気づいたのは、もっと後になってからだ。

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