【完】さつきあめ〜2nd〜

あっという間に春が過ぎて夏が来る。長い長い夏がやって来る。
7月も双葉では美月がナンバー1だった。
わたしはナンバー2。

恐ろしいことに2か月続けてナンバー1になった美月は、ゆりの売り上げに迫っていた。
もう才能としか言いようがない。それは認める。
けれど、1月前にナンバー1を奪われた時より、焦ってはいなかった。
サイトでの中傷は終わる気配もないし、新人に2月連続で売り上げは抜かされた。けれど、わたしの売り上げが落ちているわけではなかった。
そして、物事を客観的に見えるようになったのも、2月過ぎてから。

「だーから、美月の客の佐竹さんだっけ?消費者金融で見たんだってばぁ~!」

更衣室では、キャストたちが美月の噂話をしていた。
先輩に敬意を持っていない、ということで、美月はすっかり嫌われ者だった。
今でも美月と週6回毎日同伴している佐竹は、初めこそカードで支払いをしていたが、それがいつの間にか現金になり、毎日のようにおろしていたシャンパンを1本おろすのも渋ってしまうようになった。
どう見ても、普通の会社員。どこからお金がそんなに沸いてくるのか不思議だった。
彼はいつだってテーブルで放置されていて、それでもその瞳はいつだって別のテーブルで接客をする美月を追っていた。

8月の初め。
その日は同伴も入ってなくて、美月は佐竹と同伴してきた。
けれど、今日もオープンから美月は違う指名客を待たせていた。

出勤してきて、沢村と話をしている時だった。

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