【完】さつきあめ〜2nd〜
「あぁ…」
「お腹空いてる?」
「空いてるのか空いてねぇのかもよくわかんねぇ」
「あたし、ご飯作るよ。昼間スーパーに行ってきたんだ」
ベッドから起き上がり朝日の顔を見ると、朝日は心底驚いた表情を浮かべた。
この1ヵ月、わたしが口にするものと言えば朝日が買ってきたお弁当か、出前の食事のみ。
料理をする気も一切起きなくて、朝日が食べろというものを無心で口に運ぶ毎日だった。美味しいのか美味しくないのかもわからず。
キッチンに立つのも久しぶり。
冷蔵庫から今日スーパーで買ってきた材料を取り出す。
その姿を朝日はソファーに座りながら見つめていた。目の前に点いているテレビではなくて、さっきからわたしの方を何度もチラ見して、気にしている様子がよくわかる。
あぁ、久しぶり。
包丁を握りしめて、久しぶりに自分が人間らしい事をしているのに気づく。
人参と玉ねぎとベーコンをいれただけの、何ら変わりのないオムライス。
食卓に並べたら、朝日は「美味しい」とこちらへ微笑みかけてスプーンでそれを口に運んでいく。
朝日だってずっと痩せていた。食欲なんてなかったけれど、目の前にいる朝日にこれ以上心配をかけたくなかったし、由真のご飯は食べてという言葉を思い出していた。だから無理やりオムライスを口に運ぶ。
「俺の好きな食べ物、覚えていてくれたんだな」
「別にそういうわけじゃないけれど…」