【完】さつきあめ〜2nd〜
そう思って携帯をポケットにしまおうとした瞬間、けたたましい着信音が鳴り響いた。
画面を見ると、光の名前。
何をそんなに驚いたのだというのだろう。だって電話を掛けたのはわたしなのに…。

この時すぐに光が電話を掛けなおしてくれなかったら、きっと違う未来を選び取れただろう。
けれど、この時のわたしには、誰かにすがりつく弱さしかなくて…。

「もしもし……」

「どうした?夕陽、何かあった?」

「ひかる…
助けて……」

どうしてもしてはいけない過ちを犯してしまった。
どうしても、頼ってはいけない人を、頼ってしまった。

雨の音が聞こえる。
夜が更けるごとに、大きさが増してくる雨の音。
記憶が定かではない。
雨に濡れて、自分がどこにいるかも分からなくて、壁に寄りかかって、空を見上げると、真っ暗な空から、雨粒が降りかかってくる。
目を閉じて、雨の冷たさを感じた。

あぁ、このまま死んでしまってもいいや。そう思った瞬間だった。


「夕陽!!」

わたしの名を呼ぶ声を

目の前がよく見えなかった。
’夕陽に何かあったらすぐにかけつけてあげるから’その約束を守ってくれた。

「光……ごめん…」

「お前何やってんだよ!!つぅかだいじょうぶか?!」

抱きしめられて、懐かしい匂いが鼻を掠める。
何度も光がわたしの名前を呼ぶ声が聞こえたけど、そこで意識を手放した。
雨の音と混じって、光の声だけが響いていた。

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