【完】さつきあめ〜2nd〜
手を伸ばせば、あのドアに届いた

その足で立ち上がれば、この部屋から出て行く事も出来た


わたしはいつでも自分で自由を選び取れた

朝の光を浴びて、愛しいあの人の元へと走り出す


強く強く

だけど振り返ってしまった


振り返った先にいたあなたは穏やかな笑顔で微笑んでいる

立ち止まり、振り返ると、朝日はいつにもなく優しい顔をしていた気がする。
あんなに優しい顔をする人だった?

それを見た途端両目からとめどなく涙が零れ落ちた

はらり、はらりと、とめどなく流れる涙に気づかれたくなくて、振り切って、真っ直ぐに走ろうと思った。
遠く、遠くに、あの人から見えなくなるくらい
忘れないで、でも早く忘れて
わたしなんかいたなぁってたまに思い出すくらいに、早く忘れて、違う幸せを見つけて。
そう思う気持ちと裏腹に、わたしを忘れないでと何度願っただろう。わたしより好きな人なんて見つからないで。わたしよりあなたの心を揺り動かす人がこの世界にいませんように。あなたの世界の全てがわたしであるようにと。

あなたを憎み、あなたへの復讐を誓ってこの世界に入ったはずなのに



大誤算だった

わたしは、あなたを愛してた


強く強く、身を引きちぎられるくらいの痛みの中で
憎しみと愛情の狭間の中で
好きだからこそ、さよならを言わないといけない恋があると知ったのは、19歳の終わりの出来事だった。

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