【完】さつきあめ〜2nd〜
「触らないで!」

朝日の優柔不断な態度も
美月の存在も
美月の中に芽生えた小さな命さえ
全部全部壊れてしまったらいいのにって。自分の中に芽生えた醜い感情を抑えられなくなっていた。
こんな風にありたかったわけじゃない。ただ側にいて、あなたの夢を応援して、あなたに必要とされる人間でありたかっただけ。
でも人は弱いし、いつだって自分とした約束を忘れてしまうね。

「夕陽、だいじょうぶか?
俺につかまっていいから」

上がってくる息に、酸素が薄くなるのを感じて、近くにあった曇りなき優しさにすがってしまったのも紛れもないわたしで

「待てよ!」

「何だよ、あんたといると夕陽の体調が悪くなるんだよ。
もういい加減にしてくれ」

「さくら、光と行くのなら俺はお前をきっともう許せなくなる」

「本当に勝手な人で呆れるよ。
夕陽を傷つけてきたのはあなたじゃないか」

「さくら!!」

光の言葉を無視して、朝日はわたしの名を呼ぶ。
一瞬足を止めて、朝日の方へ振り返る。
わたしを呼び止めた言葉はこんなにも力強かったけど、朝日は困ったように眉毛を下げてわたしを見つめる。

朝日、もうわたしの事を許さなくていいよ。
何も考えたくなかった夜に、わたしを受け入れてくれた人は、こんなにもダメで、こんなにも弱かったわたしを知りながらも、それを責めたりはしなかった。
生ぬるいほど甘いその愛情は余りにも居心地が良すぎて、酔いしれていたくなるほど。
こんなにも不完全なわたしを包み込んでくれる。あなたの海に迷い込んで、何もかも忘れられるのならこのままで。

その優しさにすがりついてしまった事を、こんなにも後悔している。
だから朝日、あなたはわたしをもう許さなくていい。
あなたにずっと復讐をしたかった。けれどそれがいつしか愛情に変わって
だけどこんな形で、あなたを1番傷つける形で復讐を果たすなんて、きっとはたから見れば滑稽な話だったよね。

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