【完】さつきあめ〜2nd〜
毎日一緒にいて、毎日この人の体に触れていたのに、全くこの人を見つめていなかったことに。
わたしの目の前で笑顔を作る朝日は、酷く痩せていたからだ。
頬が少しこけていて、シャツから覗く腕も折れそうに細くなっていた。
その姿を見ても、朝日に何も言えなかった。

向かい側のソファーに座った朝日は、わたしをじぃっと見て、すぐに目を逸らした。そして、深いため息をつきながら煙草に火をつける。

「さくらは…いつまでここにいるつもりだ…」

「え?」

それは出ていけという意味なのだろうか。
けれど煙草を持つ朝日の指が震えていた。

わたしをあれだけ好きだといい、わたしを強引に抱いて、何て自分勝手な男だろう。

「さくら…病院に行った方がいい…」

「病院?」

「お前…痩せすぎだし…
それに…俺のせいだよな…本当にごめん…」

「どうして…宮沢さんが謝るの?それに宮沢さんの方が痩せすぎだよ…」

「俺のことはいいからっ!」

「…どうして、怒るの…?」

言った後に、朝日はいつものように肩を落とし、灰皿の上に煙草を押し付けた。

「この1ヵ月…ずっと後悔してた。
何であんなことしてしまったのかって…。
有明に抱かれてるなら、俺に抱かれてもいいだろって最低なことを思った。
でもお前…

俺はお前の幸せを奪うことしか出来ねぇんだな…」

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