【完】さつきあめ〜2nd〜
兄貴は言い訳ひとつもせずに、全ての罪を背負っていた。あの人は、そんな潔い人だった。
本当の罪人は自分だ。けれど今日まで俺はその罪を誰にも話はしなかった。


時は流れて
七色グループは大きな組織になっていった。
ONEから双葉。そしてTHREEを出して
4店舗目のシーズンズを出すことに決めた、うだるような暑い夏日が続く年だった。

シーズンズは、かつてのONEに少し似ていた。深海が店長を勤める深海が愛していた店。
そこのオープニングキャストに’さくら’という源氏名を選んだひとりの女の子がいた。それについて深海と言い合いになった事を覚えている。
そして、運命の日は訪れた。

シーズンズで綾と美優の横で小さく縮こまっていたひとりの少女。
綺麗な女だと、思った。
化粧っ気のない、キャバ嬢らしくなかった彼女。
さくらのような華やかさもなかったし、少し緊張していた彼女は怯えたような表情で俺を見ていた事を覚えている。

でも彼女はどんどん変わっていった。
いつも一生懸命で、いつだって健気だった。いつからだろう、シーズンズが彼女を中心に動き出したのを感じたのは。
どんどんと人を引き込んでいく姿が、さくらに似ていると気づいたのはいつからだろう。

俺は、どんどん変わっていく夕陽を初め利用しようとした。
夕陽が俺に好意を持っていると知っていて、利用しようとした。

夕陽の言葉が何度も蘇る。夕陽が俺に真っ直ぐにぶつかってきてくれたあの頃。

< 502 / 826 >

この作品をシェア

pagetop