【完】さつきあめ〜2nd〜
「朝日に必要とされる人は…全員羨ましかったし、ずるいって思ってた…。
だから朝日がゆりさんや菫さんに期待をかける事は当たり前だって自分に言い聞かせて…でもやっぱり納得出来なくて…
皆は知らないけど、あたしってすごく欲深い人間なんですね。
愛される事と同時に必要とされる事まで望んだ…。それが叶わなかったら、子供みたいに拗ねてみたり…」

柔らかい微笑みを浮かべたままこちらを見つめ、菫は優しい目でわたしを見つめ続けた。

「羨ましかったのは、あたしの方……」

「え?!」

「大人げなく嫉妬していたのは、あたしの方……。
キャバ嬢として期待してほしかっただけじゃなくて、何もなくたって愛されたかったのは、あたしの方。
結婚してまで、未練たらたらの女々しい女だって思われたくなかった…。
愛された過去があるのなら、胸をはって今を歩いてるかっこいい女だって思われたかった。
それがあたしのプライドね?」

「菫さん……」

「でも朝日が必要としているのがキャバ嬢のあたしだって知ってたから
知っててもそれを口に出す事はしなかった。
朝日の前ではキャバ嬢としての菫でいなくてはならなかった。
きっとゆりも同じね。あたしやゆりが欲しくてもどうしても手に出来なかった物を、あなたが手にしてる」

その言葉はどこか優しくて、全然敵意を向けている物には感じなかった。
むしろ清々しいほどの爽快感があった。

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