壊れそうなほど。
「足、痛いの?」

思わず足元に手を伸ばしたわたしに、啓吾が心配そうに尋ねた。彼のこういうところ、すぐに気づいてくれる優しさが好きだ。

「うん。豆? 魚の目? できちゃって」

「……じゃあ、ヒールやパンプス履かなくていい人生、送ればいいんじゃない?」

「え?」

「沙奈が働かなくても、おれの収入なら全然やっていける。永久就職、悪くないと思うよ」

ダメ押しだった。

結婚したら、痛い靴を履かなくてもいい。

「ふふ、ありがと。結婚しよう、啓吾」




──斯くしてわたしは、卒業と同時に結婚することに決めたのだった。

このあとに待ち受ける『彼』との出会いも知らないで。




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