壊れそうなほど。

沙奈が「発声練習つき合って」と言うので、俺はギターを取り出して、その辺のパイプ椅子に座った。

沙奈も隣に、こちらを向くようにして腰をかける。長い髪が肩からはらりと落ちて、仄かなシャンプーの匂いが鼻先をかすめた。クラクラする。

デニムのショートパンツから伸びる白い太もも。

触りたい。いっぱい触ったのにまた触りたい。

……なんか俺、煩悩のかたまりだ。やばい。

「……なんか、ちょっと照れるね」

「……うん」

「……ユキも照れてる?」

「……うん」

俺、うんしか言ってない。だって好きすぎて脳ミソ沸騰しそう。

「あ、そうだユキ、あとで…」

沙奈が何か言いかけた時。

「沙奈ちゃーん……ちょっと、いい?」

暗幕の隙間から、多田さんがやけに神妙な面持ちで沙奈を呼んだ。
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