壊れそうなほど。
「あ、佑介《ゆうすけ》!」

わたしは慌てて彼の元へ小走りした。

「おせーよ、沙奈」

佑介は片眉をくいっと上げ、呆れた視線をこちらに落とす。相変わらず生意気だ。

彼は2年生でバンドサークルの後輩。後輩のくせに、わたしのことをいつも呼び捨てにする。まあ、仲がいいから気に止めてはいない。

「ごめん、寝坊しちゃってさー」

「寝坊ってもう昼だし」

ふんっと鼻で笑って、佑介は食堂へと歩き出したので、わたしも彼のあとを追った。

「ねえ、みんなもう来てるの?」

背中に問いかけると、彼は振り向きもせず、

「沙奈以外はな」

嫌味たっぷりに返して来た。

うちのベーシスト様は本当に生意気だ。
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