【短】青空なんて、いつもみえない。







倉山くんと初めて話したのは、夕日が綺麗な日だった。



土曜日。塾からの帰り道、疲れを癒したくて、小さいころからお世話になっている花が咲き乱れる公園に寄ったときのこと。



空がこれでもかってくらい橙色で、太陽がこんなにかってくらいに燃えていた。



美術部に所属している私は、この空が描きたくなって、あわててスマホを取りだし、写真を撮った。



どんなに角度を変えてもうまくとれなくて、場所をうつす。花壇と花壇のあいだをぬうように。



「……あれ?」



移動した先で、彼をみつけた。



話したことはないけれど、うちの学校の生徒なら、きっと知っている。



それほどに有名なひと。



話したことがないから、声をかけるべきかどうか、悩んだ。



べつに、話しかける必要はまったくもってない。



けれど、彼もこの綺麗な空をみているんだと思うと、無性に語りたくなった。私は空が好きなのだ。
< 2 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop