恋の宝石ずっと輝かせて2
「だけどさ、ニシナ様ってどういう動物なんだろう。まさかトラとかライオンとかいうんじゃなないだろうな」

 少し斜面になったところを仁は力を入れてペダルをこいだ。

「ここにそんな動物がいる訳ないでしょう。やはり白蛇、鹿あたりじゃないかな」

 ユキも仁の後に続いて、しっかりとこぐ。

「もしかして日本狼ってこともありえるかも。神様になって生息していたらかっこいいな」

「狼か……そう言えばキースは元気でいるのかしら」

「ジークも真面目に森の守り主に仕えているんだろうか」

 ふたりは夜空の星を仰ぎながら懐かしい友を思い馳せる。

「トイラが人間になったら、皆に会いにあの森に行ってみたい。その時は歓迎してくれるのかな」

 ユキは心からそう願う。

「もちろん喜んでくれるさ。でもそうなるとトイラが二人分かれて存在することになるのかな。それよりも、トイラが人間になったら戸籍とか問題になるかも。それがなかったらパスポート取れないし、日本からじゃ想い出の森にもいけない」

 目先の問題だけしか考えてなかったので、その後のことを想像すると、ありとあらゆる問題が圧し掛かってきた。

 ユキも仁もそれから黙り込んでしまった。

 仁は言い出した責任を感じてなんとか取り繕うとする。
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