ロスト・ラブ


「うわ、沢野さんもいるじゃん」


突然名前を呼ばれて、大げさなくらいに体が反応した。


昼休みの廊下。

胡桃とトイレから教室に戻る途中で、胡桃に話しかけてきた男子2人のうちの1人が、隣にいる私に気が付いて顔をしかめたからだ。


胡桃に気とられすぎなんだよ、なんて呆れも出てくるけど、そこはグッと我慢。


胡桃にしつこくする奴なら容赦はしない。

そこだけは頭の中でしっかり意志を持ったうえで、短く息を吐いた。


「胡桃に何か用?」

「えっ?あー……、別に、挨拶をしようかなーと」

「なんだ、そっか。……確か、池内くんと東くんだよね?あんまり胡桃にしつこくしないでね」

「え、と。あ、うん……」


呆気にとられた様子の2人に「じゃあ」と背中を向けた。

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