ロスト・ラブ


颯太の家だなんて、いつぶりだろう。


「お前の家でもいいけど、話す内容が内容だし」


颯太の言葉に、あぁ、と思った。


たぶん、颯太はお母さんのことを気にしてくれている。

私とお母さんの間では、暗黙のルールかのようにあの日の出来事の話はしないから。


コクリと頷いた私を見て、颯太はスタスタと歩き出した。


でも、私がちゃんと付いてきているかを確認しながら歩幅を合わせてくれている。


その背中を、私はただ真っすぐに追いかけた。



なんか……不思議。


ついさっきまで遠く感じていた颯太が、いま私の目の前を歩いている。


颯太が待ってくれていた。その事実だけで、こんなにも感情が込み上げてくる私は重症なんだと思う。


あぁ、やっぱりダメだなぁ、私。


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