ロスト・ラブ


ずっと怖くて怖くて逃げていた。


もし、颯太に触れて、他の男の人同様に拒絶反応を起こしたら……。

それを想像する度、自分が完全に終わってしまうんじゃないかって、すごく怖かったから。


───ブーッ、ブーッ。

不意に、ポケットに入れていたスマホが震えた。


画面を見ると、そこにはつい数秒前まで頭の中にいた人の名前。


【颯太:ついたけど。おまえいまどこ?】

ひらがなの羅列。

少しくらい漢字を使えばいいのにと思ってしまうのけれど、それについては黙っておこうと思う。


「メッセージ、柳くんから?」

「うん」


隣にいた胡桃が、ひょこっと顔を覗き込んできた。


今ここは学校の玄関。

ついさっきまで胡桃の夏休み補習に付き合っていて、これから学校を出るところだ。


「ごめんね茜ちゃん。結局、1週間毎日胡桃の補習に付き合わせちゃって」

「ううん。私もいい復習になったし。それに、私が胡桃と一緒にいたかったから」

「うぅ~、茜ちゃん大好き~!」


腕にぎゅーっとしがみついてくる胡桃に笑みがこぼれる。

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