恋かもしれない
当然最後まで私の名前は呼ばれず、あんなに人気のあった松崎さんの名前も呼ばれなかった。

ペールピンクの子もアイスブルーの子も哀しそうな顔をしている。

もしかしたら、松崎さんは誰の名前も書いてないのかもしれない。

意外な結果に驚きながらも、また今回もダメだったと盛大にへこみ、人波に流されるようにして桟橋に降り立つ。

自分の性格を恨みながらとぼとぼとタクシー乗り場に向かっていると、綾瀬さん!と呼ばれた気がした。

心なしか、松崎さんの声に似ている気がする。

でもまさか、そんなはずがない。けれど……。

少しの期待を持ちながら振り向いて声の主を探すと、流れる人波の中で松崎さんを見つけた。

けれど立ち止まって誰かと話をしているようだし、他に私を追いかけているような人もいない。

恋したい願望が強すぎて、幻聴が聞こえるようになったのか。そんなの、ますますへこむ。

タクシー待ちの列が滞ることなく流れていく。

私の番がきて、一人で乗り込んで腰を据え、閉めますよの声と共にドアが動いたその刹那、後方からにょきっと伸びてきた手が、ガシッとドアを押さえた。

はあはあと弾む息づかいも聞こえてくる。

こんなことするなんて、一体誰なのか。

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