恋かもしれない
今度は美也子さんがずいっと身を乗り出してくるから、思わず体を引く。

「え、何かって――」

口に出せば、松崎さんの腕の感触とか優しい笑顔とか声とか、一気にぱぱぱとフラッシュバックして顔がボッと熱くなる。

慌てて頬を隠すけれど、これじゃ変に誤解されてしまいそう。

何か、何か言わないと――。

「ええっと」

熱い顔を手で扇ぎながら、視線をさ迷わせて考える。

どう説明すればいいの?

「ねえ、奈っちゃん?」

美也子さんを見れば、良い雑貨を見つけた時のようにキラキラした表情をしていた。

それ、やっぱり、変に誤解してますよね?

「ベ、別に、何もないですよっ」

慌てて否定すると「経営コンサルタントって、男の人なんでしょ?」と、笑顔を強めて聞いてくる。

「そ、それは……はい」

「奈っちゃん、好きな感じ?」

「好き!? いえっ、好きとかそんなんじゃなくて、気になるというか、あの――違っ、やだ、そんなんじゃなくて、えっと、素敵、じゃなくて、やだ、そんなんじゃないんです~」

否定しようとすればするほど深みにはまって、自分でも何を言っているか分からなくなってきた。

あわあわバタバタしてる間に、美也子さんが珈琲をいれてくれていた。

青色のカップが置かれるけれど、じっくり鑑賞する余裕がない。

「あはは。奈っちゃん、可愛いすぎ。落ち着いて。ほら珈琲飲んで。もう聞かないから。でも、相談したくなったら、いつでも言ってね。この世に生まれて三十二年の乏しい経験だけど、しっかりアドバイスさせてもらうわ」

「はい、そのときは……お願い、します」

温かい珈琲をゆっくり飲むと、少し落ち着いてきた。

経営コンサルティングが、寝る間もない忙しいお仕事だなんて。

松崎さんは、土日も休みなくお仕事しているのだろうか。

連絡は、いつ来るのかな。
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