恋かもしれない
「これ、戸惑い、なんでしょうか?」

「そう。綾瀬さんは男性とお付き合いするのは初めてなんでしょう? 嬉しさや喜びよりも、これから何かが始まっていくかもしれない怖さとか、未知のことへの不安の方が大きいんじゃないでしょうか。それはきっと、どの男性が相手でも感じてしまうことだと思います。ですが、これから先、岩田さんと会う回数を重ねていって親しくなれば、自然と溶けていく気持ちだと思いますよ」

「そうなんでしょうか」

「ええ、そうですとも。今までも会員さんが同じ様な表情で不安な気持ちを訴えてこられた事がありますけれど、デートを重ねていただくうちに笑顔に変わっていきました。それは、お相手への恋心が不安な気持ちを上回ったからなんです。まあ、中にはやっぱり合いませんでしたと仰って上手くいかなかった会員さんもおられますけれど……。でもそれはごくごく少数なんですよ」

佐藤さんは、参考までにといって今までの事例を簡単に話してくれる。

それもみんな、彼氏いない歴イコール年齢の人が幸せを掴んで退会したお話ばかりだ。

「だから綾瀬さん! あなたもきっといい方へ変わっていきます! 同行した唐沢も、お二人はとてもお似合いだと太鼓判を押しているんですよ」

「唐沢さんの、太鼓判、ですか?」

それって、正しいのだろうか。

首を捻っていると、佐藤さんは一層声を大きくして「ええ、私もそう思います!」と肯定した。
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