短編 身分


私は彼と同居しいて、幸せゲージが最高潮にあったのに、ここ最近の出来事で悲しくなっていた。

御曹司であり、私の彼氏である綾は最近帰りも遅い。

先日パーティーに2人で行った時も、私がいるのにもかかわらず、女の子は綾にアプローチをしまくる。

「もう、なんなの」

一人でテーブルについて夕飯を食べる女ほど悲しいものはない。

実際 綾と私は釣り合わない。
彼は御曹司、私は根っからの庶民出会って、高望みはしていないと言えば嘘になるけど彼と一生生きていたい。

帰りも遅いし、何を言ってもそっけないし、終わりが近いのだと感じた。







「ただいま」

「おかえり ご飯は?」

「食べてきた」


ほら、いつもこの調子。
すぐ仕事場にこもって私より遅く寝る毎日。
寂しいって気持ちは私が言わないと通じるわけがなくて。

私だけが好きなのかな。
そんな思いを抱えながら私の誕生日になった。

綾からはなんの連絡もない。
これはいよいよ別れ話だと感じ、玄関を開けると綾の靴があった。

なぜこんな日に彼は早く帰ってきたの。

涙をこらえながらリビングに入るとパーン!!とクラッカーがなる。

「唯、誕生日おめでとう!!」

目の前には綾の笑顔と部屋中に飾られた星やらハートやらとにかくすごい。

「別れるんじゃ、」

「は?なにそれ?
俺は唯と別れるつもりなんかないよ?」

「でも、最近素っ気なくて、帰りも遅くて、」

「俺思ってることすぐ顔にでるし、その状態ならすぐ唯にバレるじゃん? サプライズにしたかったの
遅くなったのは、これ選んでたの」

そう言って綾が出したのは紺色の小さな箱。

「開けてみて」

彼の言葉通りに箱を静かに開けると、そこにはグレーのシンプルな指輪だ。

「うそ、」

「唯、これは婚約指輪で結婚指輪は二人で選ぼうよ

俺と一生共にしてくれないか」


「っ、はい!」

涙が溢れてきたのを綾が親指で拭ってくれて、そのまま私を抱きしめた。

最近まで悩んでいたのが嘘みたいに今が最高に嬉しい。


「そうと決まれば、ベッドに直行だな」

「え?ちょ、綾?」

「ケーキ買ってきたんだけど、それはまた食べよう」

「まって、え、りょ」

言いかけた言葉は彼の唇に塞がれ、私の理性は脳の片隅にやられる。

「その気になった?」

上からニヤニヤした顔で見られると恥ずかしいけれど、唇が少し触れるくらいのキスをすると、それで彼には伝わったようだ。

私を抱きすくめ、耳元で おめでとう と言うと私と彼は甘い時間に溺れていった。



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