あの日の追憶
第五話
 「もう夕方…。最後にもういちど海を見て帰りたいんだけどいい?」
「電車にはまだ時間あるし、問題ないよ。」
ザザンと静かに動く海を見つめ俺は考えた。瑠唯のために俺は何ができるだろうか。ただプリンをもって病室を訪れる事しかできないんじゃないか?もどかしい。そんなことを考えていると隣からドサッ隣から何かが落ちるような音がした。まさかと思い、瑠唯の方を見ると案の上砂の上に倒れ込んでいた。
「瑠唯!おい、しっかりしろ!顔が赤い。夕焼けのせいか?いや、まさか…。」
おでこに触れてみるとやはり熱かった。
「具合悪くなったらすぐ言えって言っただろ!とりあえず救急車…」
「…だって、迷、惑かけるし…」
「だから迷惑でもなんでもかけろって。」
数分後救急車が来て近くの病院へ搬送され熱が下がってから病院を後にした。
 その日から瑠唯の病状は悪化していくのが目に見てわかるようになった。
「瑠唯、それ…」
「ん?あー、これ。酸素チューブ。なんか最近呼吸が辛いと思って検査してみたら肺の筋力が衰えてきてるって言われて、こーなった。まだ十代なのにお年寄り扱いだよ。」
俺はテーブルにプリンの箱を置いてから瑠唯に近づき優しく包み込んだ。
「颯真?何?いきなり。」
「無理して笑うな。バレバレなんだよ。」
「何言って…。…何でバレるかなぁ。」
と瑠唯は俺の背中に手を回して泣きながら続けた。
「まだ…まだ死にたくない。まだやりたい事いっぱい残ってる。まだ颯真と一緒にいたい。まだ死にたくない~。」
やっと瑠唯の本音を聞けた気がした。
その後、俺に抱きついたまま泣きつかれて眠ってしまった瑠唯をベッドに寝かし、置き手紙をして家に帰った。
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