涙の裏側    ~もう一人の私~
「咲ちゃん、最高!!」と

マスターも、涙を浮かべて笑ってる。

二人に笑われて渋い顔をするも………

目はプリンを見つめたまま。

この人、ホントにプリンが好きなんだ。

人の事ガキ呼ばわりしてたけど、自分の方がもっとガキじゃん!

「はい、どうぞ。
私は『ガキ』じゃないから、プリンは貴方が食べて下さい。
ネッ!マスター。」

マスターに許可をもらって

プリンの入った器を、再び押し返した。

「咲ちゃんがどうぞって。
食えば?」と男に促す。

自分の手元に帰ってきたプリンを持って

バックヤードに消えていく男。

「ごめんね。
アイツ、コミュニケーション能力ゼロだから。
おぉ~い、ささ!忘れもん。」
男の忘れて行った財布と携帯を手に笑うマスター。

「プリン見ると、他がどうでもよくなるんだよなぁ………」と

まだブツブツ言ってるマスターに

「……………………………………咲々??」と聞き返す。

「えっ?
あぁ、アイツ笹山だから『ささ』って呼んでる。」

「……………………笹山……………………ささ。
……………………………咲々…………………。」

急に青ざめた私に

「あれっ?どうかした??」って、驚くマスター。

「あっ………いえ。
帰ります。
お会計を…………………。」

そそくさと帰り支度をするけど…………

手が震えて、思うように動かない。

「大丈夫?
送るからちょっと待って。」

「オイ、ささ。
後、頼んだ!!」

笹山さんに大声で伝え、車の鍵を握って私を抱えて表に出る。

昨日と同じ車に乗り込むと、少し落ち着きを取り戻した。
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