俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~


「お前、ふざけんなよ! なにも知らずに最低女呼ばわりしやがって! お前みたいな傲慢で失礼な男と結婚なんてさせられるか!」

その言葉に、和樹さんの足が止まった。

「断る権利がそちらにあると思っているのか?」

そう言って振り返った彼の冷ややかな表情に、気色ばんでいた隼人はぐっと息をのむ。

「日野屋の経営状態を調べさせてもらった。先代の大女将が亡くなった後、常連客の足は遠のき銀行からも融資を渋られ、相当苦しいそうじゃないか」

その言葉に、隼人ふたり顔を見合わせた。その様子を見て和樹さんはあきれたように鼻で笑った。

「自分の実家の状況も知らずに政略結婚を断ろうとするなんて、ずいぶんのん気だな。このまま経営を続けても業績を回復させる見込みはないし、旅館を畳んで土地や建物を全て手放したとしても借金を清算するのが精いっぱいで、従業員に退職金を渡すのも難しいだろうな」

日野屋の経営が順調と言えないことはわかっていたけど、そこまで切迫しているとは知らなかった。


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