俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
 

けれど見惚れているうちに、彼女の顔色がすぐれないのに気が付いた。

どこか苦しいのかもしれない。
胃のあたりをおさえ、うつむいている。

見合い前に声をかけるなんてマナー違反だろうか、なんて思いながらも心配になって近づく。

『着物が苦しいのか?』

そう問うと、顔をあげて俺を見た彼女がきょとんとした表情を浮かべた。

『着物は普段から着ていますので、慣れてますから』と言って立ち上がった彼女を見て、一瞬息をのんだ。

ただソファから立ち上がっただけ。それだけなのに、振袖姿の彼女の美しい所作や優雅なたたずまいに、思わずみとれてため息がもれた。

たしかに祖母が絶賛するように、愛らしい女性だった。
上品で可憐で儚げで……。

美しい女性は見慣れているはずなのに、その姿を前にしただけで胸が詰まるような気がしな。そんな自分の心の動きに驚く。

けれどそれは外見だけで、中身は最悪だということにすぐに気づいた。



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