夢はダイヤモンドを駆け巡る
第九章 ヒーローを救うヒロインになれ

第1話

 あの川辺で小神から夢のあれこれを聞かされた翌週、月曜日。

 わたしは学校へ向かう道すがら、あの土曜日の出来事を思い返していた。

 あの日のことを思い出すだけでわたしの心にはモヤモヤとしたものが広がっては消え、広がっては消える。

 何でわたしはこんな超自然現象に付き合わされているんだろう、全く。

 これも全て小神が絡んできたせいなのだが――。

 土曜日、小神は彼がかつて見ていたという松本くんのお決まりのパターンの夢と、パターンから外れたわたし・星野かおるが登場する夢について、そしてわたしの夢を覗き見たことについて詳らかに語ったのだった。

 語り終えた彼がわたしに手渡したものがある。

 それは、プロ野球のチケットだ。それも二枚組の。

 日付を見ればそれは今週末に行われる人気球団同士の試合で、さらに言えば年間指定席であった。

 どうして小神が年間指定席を持っているのかそれは甚だ疑問ではあったが、ともかく小神はこのチケットを松本くんに渡し、二人で野球の試合を見に行けという。

 どうしてわたしがそんな役回りとなってしまうのかよくわからなかったし、大体高校生の男女二人きりで野球の試合なんてまるでデートのようで恥ずかしいけれど、小神曰くこれが松本くんのためになるのだというから、わたしは渋々かつもじもじと、チケットを松本くんに手渡したのだった。

「年間指定席じゃん」

 わたしが差し出したチケットを見て、松本くんは心底驚いたようだった。

 その表情の中に、嬉しさが入り混じっているのをわたしは見逃さなかった。

「これ、俺にくれるの?」

 そう言ってわたしを見おろす松本くんの目は爛々と光り輝いていた。成績優秀な男子高校生から、一人の野球少年に戻ったかのような目の輝きに、わたしもちょっぴり嬉しくなる。

「わたしの知り合いの先輩がくれたの。でもわたしの友達に野球に詳しい人がいなくって、どうせなら野球に詳しい人と行きたいって思ったんだけど、一緒にどう?」

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