夢はダイヤモンドを駆け巡る

第2話

 改札前に着いてみると、松本くんの服装もわたしと大差なかったため、恐らく今日の服装は間違いじゃなかったんだろう。

 爽やかなブルーのTシャツの下に、厚い胸板があるのが一目見て分かるほど、彼は身体を鍛え上げていた。

 私服萌え、と普段周囲の女子たちが言っている意味がわかった気がする。

 普段制服や体操着、あるいは野球のユニフォームを着た松本くんの姿しか見たことのないわたしにとって、彼の私服姿は新鮮そのものだった。

 私服を着ている松本くんはほんの少しではあるが、普段よりも親しみやすい雰囲気を伴っていた。

「よ、星野」

 挨拶も普段よりかは幾分打ち解けた言葉遣いになっている。

「今日は来てくれてありがとう」

 しかしこうして普段着で松本くんと一対一になっていると、徐々に「これってデートっぽくない?」という気持ちが嫌でもせりあがってきて、妙な緊張感が全身をゆっくりと巡り始めているのがわかった。

 そのせいで、わたしは自分が発した言葉がぎこちないものに感じられてならない。

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