私の彼氏は真面目過ぎる!【完】
「なるほどね」

 私は焦燥を隠すべく、首を縦に四、五回振った。

「……やらかしたわ」

 どうやら、全く別のパーティーに申し込んでしまった、というのは明白だった。


【飲めない男女大集合!お酒が苦手なお仲間を探している方必見・ノンアルコールパーティー★】

 年収1000万円以上の男性とお近づきになろうとしていた朝井ひばりが申し込んだのは、当初ノーマークだったパーティーだった。
 日時は来週土曜日の正午開始。場所は……かろうじて南東の方角にある会場だ。
 占い師に言われた条件は、完璧にクリアしている。

 しかし、大きな問題が一つ。
「お酒、結構好きなんですけど……」
 もともと一人飲みも含めて、飲みに行くのが好きな私。
 お酒の力でストレス発散するタイプなのである。
 これまで漠然とではあるが、結婚したら旦那と家飲みを楽しむものだと思っていた。
 疲れて帰ってきた旦那にお酌したいなあ、なんて。

 その一方で。
 一人で飲み歩いていたがために、クズ男のナンパに引っかかった過去があるのも事実だけれど……。

 これも何かの縁かもしれない、とふと思う。
 画面のタップミスをするなんて普段ではありえないことが、このタイミングで起こったのだ。きっと何か不思議な力によって導かれているのかもしれないではないか。
 古くから、合縁奇縁という。
 ひょっとすれば、お酒の弱い男性との方が、心通じ合わせることができるのかもしれない。

 そう信じて、あえて私はキャンセルをせず、スケジュールアプリに登録した。

 来週土曜の12時。
 ノンアルコール婚活パーティー。

 そこで見つけよう。
 退屈なくらい真面目だけど、私を幸せにしてくれる運命の王子様を。
< 21 / 258 >

この作品をシェア

pagetop