マトキュア
「はぁ~、排気ガス臭い。」
真琴は、飛行機を降り、鼻をつまんだ。空は、少し曇っていた。


今日から、俺は新しい学校に行く。前の学校の五倍以上生徒がいて、校舎もでかい。真琴の父の転勤がきっかけで、今年、田舎から都会へ引っ越すことになった。本人は、都会の臭いが嫌いで、一生住みたくないと考えていたため、ショックを受けた。
「なんで俺がこんなめに・・・。」
そう呟きながら、真琴は新しい通学路を歩いていた。
学校に着くと、若い女性の先生がクラスまで連れてられていった。寝癖か、パーマかわからないくらい巻いたロングヘアーが、お尻までかぶっている。「不潔だ。」と思う。この人が担任の人だな。と気付くいたのは、教室に入ってからだった。
黒板に「横塚真琴」と書くと女子が「えっ!眼鏡、ダサ。って言うか暗くない?」やら、「かっこいいの期待してた。」とか、ボソボソと文句を言い始めた。「悪かったな、かっこよくなくて。」なんて思いながら、自己紹介をする。
「では、横塚くんは・・・」
「はいはーい。僕の後ろ空いてまーす。」
窓際の男の子が、手をあげて言った。
「じゃあ、あそこに行って。窓際の一番後ろ。」
ラッキー。心の中でガッツポーズした。目立たないことへ感謝。
席までの間も女子のヤジは凄まじい。「絶対陰キャっしょ。」「あんまり・・・言うなって。」笑いながら話す。なんて性格の悪い子だ。まったく。
席に着くと、前の席の奴が話しかけてくる。
「俺、年丸征人。まー君でよろしく!」
真琴には、 まぶしいすぎるくらいの笑顔で彼は言った。
「あー、よろしく。でも、いきなりまー君はさすがにきついから征人で。」
真琴も頑張って答えた。すると、少し困った顔をして、
「いいよ!わからないことあったら、すぐ、聞いて!何でも答えてやるよ!」
またあの笑顔で言ってくれた。真琴の目がくらんだ。
ホームルームも終わり、一時間目の英語に入る。どんな先生なんだろう。真琴は、先生を観察するのが好きで今までの先生には、「実写版黒田氏」と、警戒されていた。
説明しよう!「実写版黒田氏」とは、「黒田氏の授業」と言う漫画の主人公で先生を観察し過ぎて、とうとう、完璧な先生作るため指導し始める男の子のことである。観察の内容は、声量、姿勢、分かりやすさや、色使い、など授業のことから、性格、年齢、家族構成、家賃、最終的には、通帳のパスワードまでわかってしまう、先生たちにとっては、悪魔のような人なのだ。
一時間目英語かー。男かな、女かな?
「英語の三谷先生は、女性だよ。」
征人が、聞いてないのに答えた。
「あと、元ヤンって噂がある。けど、誰も信じない。」
「なんで?」
真琴が、少し照れながら言うと、
「見たら分かるよ。」
ちょうど、先生が入ってきた。真琴は、驚いた。小学生が入ってきたのだ。でも、彼女は普通に教卓へ。
「日直号令。」
低い重い声が聞こえた。でも、彼女の顔は見えない。
日直の号令のあと、全てがわかった。あの子が、三谷國子か!驚く真琴を見て、征人は腹を抱え、息を殺して笑った。おそらく、真琴の顔が、魚のマンボーのようだったのだろう。
「Please open page 20」
そして、はじめての授業が始まった。



帰りは、一人だった。征人が教えてくれた同じ方向の人は、いたが部活だそうだ。だが、真琴はそれが嬉しかった。一人の時間を大切にしているからだ。改めて今日の成果を確認する。
まず、三谷國子(28)。音量○ 姿勢△ 分かりやすさ○色使い◎ 声☆ 。専門科目・英語。外国なまりの発音と、少しやる気のない気だるげな授業。小さい自分を目立たせるために、不良になったと考えられる。また、猫好きで、ツンデレ系年上好き独身女性。家族構成 父・学(64)母・愛美(58)兄・堺 摩詩(29)義姉・卑弥呼(29)めい・若菜(2)。住所○○県○○市○○区○○ビル3F。家賃3万7000円。パスワード5368。
中井真直(45)。音量△ 姿勢○ 分かりやすさ◎ 色使い☆ 声○。専門科目・国語。・・・・・・。
帰りながら、確認していると、
トゥートゥートゥトゥトゥー、トゥートゥートゥトゥートゥトゥ・・
有名なクラシック音楽が聞こえてきた。
そこは、少し派手な外見の雑貨やさんだった。真琴は、引っ張られるように中へ入っていった。カランカランっと鐘が鳴った。
中は、洋服、ビーズや、ドリームキャッチャーなど色々なものが売っていた。その中の「学ラン用ボタン」が、真琴には、引っ掛かっていた。
「アラ~可愛いボーヤ。何か買いに来たの?」
店の奥から金髪美女が現れた。
「あっ・・・えっと・・・・。」
「あら、やだ!あなた!ボタンがひとつないわよ!ほら、買っていきなさい!安くしとくから。あなたがはじめてのお客さんよ。はい。」
美女は、袋に2つボタンを入れて渡してくれた。何て美しいんだ。なんて、真琴が見とれていると、
「あーー!あなた、引っ越してきた横塚さんとこのぼーや?」
「はい・・・そうです。」
なんで知ってるんだろー?まーいっか。
「早く帰りなさい。そして、しっかり休みなさい。これから色々あるだろうから・・・。」
彼女の最後の言葉に真琴は気づいたが深くとらえなかった。「ほら、目の前よ。お帰り。」
彼女が人を開けると目の前が家だった。おかしい。絶対500m以上あったはずなのにもうそこなのだ。なぜだろう。
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