La liberté
第二章

開幕

母がいない毎日を不思議に思い生活しました

祖母に『あーちゃんは???いつ帰る??? 』

※私たち三姉妹は母を【あーちゃん】と呼んでいました

と聞いたとき、祖母は悲しそうな顔をしてこう言いました

【入院してるよ。お父さんには聞いたら駄目だよ】

祖母からも父からも母は病気で入院している

お見舞いには行けないと聞かされていました

何故お見舞いに行けないのか不思議でしたが

納得しないといけないような気もしていました

母を最後に見たのは家の玄関でした

いつも持っていた小さなカバンを持って

買い物にでも行くんじゃないかってくらいの軽装で

私『 あーちゃんどこ行くの???』

母『 病院!!行ってきます!!じゃあね』

そのとき見送った後姿が私が母を見た最後でした

平日だったその日、私は学校を休まされていました

今、思うと父や祖母が突然、母がいなくなったでは

私が納得しないと思ったのか気をつかってくれたのでは?

と良い風に解釈していますが、今でも真相は不明です



母がいなくなり数ヶ月経ってから父から話があると

私と妹Aは祖母の衣装部屋へと呼び出されました

※妹Bは保育園だったため話が理解できない年齢でした

箪笥がたくさん並んだ少し埃っぽい部屋

祖母の匂いがする部屋で大切な話をされました

今でも鮮明に一語一句、覚えています



父『 あーちゃん、入院しての知ってるよな???』

私、妹A『 うん!もうすぐ帰ってくる???』

居心地の悪い長く感じた沈黙が流れたあと

父『あーちゃんは、もう帰って来ない 』

私、妹A『 .......え?あーちゃんは???』


そのとき初めて父が号泣するのを見ました



『 あーちゃんは悪いことをした 』
『 この家には、もう金が無い 』
『 お金を返すのにお前らが大人になるまでかかる 』
『 あーちゃんと暮らしたいならそれでいい 』
『 あーちゃんと暮らすかお父さんと暮らすか選べ 』


小三の私と小一の妹Aに難しい話をしたのか

私たちは幼いながら難しく厳しい選択を迫られました


父は無口で厳しく三姉妹にとっては怖い父

怒鳴られる叩かれるなんて日常茶飯事でした

今じゃ虐待なんて言葉があるけれど昔は躾でした

私も妹Aも【あーちゃんと暮らしたい】

そうお互い思っているのもわかっていました

しかし、その場の空気が父の威圧が私たちを飲み込み

私、妹A『 お父さんと暮らす 』

気持ちとは真逆の答えを言っていました

父『 いいんだな?もう二度と会えないぞ? 』

私、妹A『 うん、大丈夫 』

父『 あーちゃんのじぃちゃんばぁちゃんにもだぞ? 』

私、妹A『 .......うん、大丈夫 』

あの頃は、そう答えるしかなかったんです

父に逆らう勇気は、ありませんでした


両親は自営業で飲食店をしており週末も仕事

祖母も店を手伝っていたので三姉妹は暇を持て余す

ゴールデンウィーク、夏休みなどの長い休みは決まって

母の実家に預けられ、じぃちゃん、ばぁちゃんと過ごす

私達が暮らす場所から車で二十分ほどの場所でしたが

小旅行のような異世界のような不思議な感覚でした

母の実家では私が初孫ということで可愛がられていました

覚えている限りでは良い思い出しかありません

公園で自転車の乗り方を教えて貰ったり

ばぁちゃんの作ったお弁当を持ってお花見をしたり

動物園、水族館、博物館、お祭り、海、プール、花火

初体験な場所へたくさん連れて行って貰いました


もう二度と会えないなんて思いたくない

絶対に会えると、そんな希望を持っていました

電話番号も知っている

道だって覚えている

内緒で行けばいいんだ


そんな気持ちも持てないほどの毎日が来るとも知らず

この頃の未来には明るい希望と期待しかなかったんです







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