鬼畜な兄と従順な妹
「おまえの制服と鞄と、教科書を持って来てやったぞ。ほら」

 と言うやいなや、お兄ちゃんはそれらを床にドサッと投げた。置いたではなく、本当に無造作に投げた。

「あ、ありがとうございます」

「おまえ、何やってんだ?」

 何って、見ればわかると思うのだけど……

「着替え中です」

 ”だから出てってください”って言いたいけど、怖くて言えない。

「着替え?」

 とお兄ちゃんは言いながら、収納の中を見た。

「な、何だよ、これは……」

「父が、用意してくれたんです」

「くそっ。おやじのやつ!」

 そう言うと、お兄ちゃんは吊り下げられた服の何着かを乱暴に掴み、引き裂きそうな勢いだったので、

「やめてください!」

 と言って、私はお兄ちゃんの腕にしがみ付いた。

「せっかく父が、用意してくれたのに……」

「父、父ってうるせえんだよ! おまえは乳を丸出しだしな」

「え? きゃっ!」

 私は慌てて、手で胸を隠した。ブラを着けてるから、"丸出し"ではないと思うのだけど。

「明日は始業式だけだから、教科書は持ってくなよ!」

 と、捨て台詞のように言い、お兄ちゃんは部屋を出て行った。

 私は、殆ど裸同然の姿を男の人に見られた恥ずかしさで、顔が、燃えそうなぐらいに熱くなっていた。
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