異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
三番勝負⑤
何かに呪われたような会場の中で、私はなんとか無事に曲を弾き終えた。
危なかった……怖くて手が震えるところだったよ?
一息ついて立ち上がり、客席にペコリと頭を下げる。
啜り泣くような『何か』はもう全く聞こえない。
それどころか、何故か会場はシーンと静まり返っている。
ひどい!せめて、パラパラっとでもいいから拍手をしてよ!!
提督さんや少尉さんやフレディまでボーッとして、ちゃんと聞いてたの??
怒るよ、マジで!
私は溜め息と共に席に帰った。
そして、大原さんの横に座ったんだけど、何故か大原さんも皆と同じようにボーッとしてる。
おかしい…………。
皆が皆、ボーッとするなんて、集団催眠にでもかかったのかな?
もしかして、私のシャーマン力、催眠術の方向に変換されたとか?
そんな、まさか……と、皮肉っぽく笑った次の瞬間、私はあり得ない体験をすることになったのだ!

「ブラボーーー!!セ……すずなさん!!」

「セ………お嬢様!!素晴らしい!!なんと感動的なんでしょう!!」

フレディと少尉さん!?
その2人の称賛の声を皮切りに、会場は大きく揺れた。
そして、その反動で私は3センチほど浮いた……。
見回すと、客席の女の人が目に涙を浮かべていたり、ハンカチで鼻を押さえていたりと、スギ花粉でもばら撒かれたのかな?という現象が起きている。
しかしそれは花粉症ではなく、信じられないけど、感動して泣いているらしい……え?ほんとに?
審査員の主婦っぽいおば様も、ハンカチをぐぐっと握りしめ、しきりに拍手をしてくれていた。
何故かは全くわからないけど、私の演奏は結構良かったみたいだ。

「2人ともお疲れ様。では、これより本部で審議に入る。その間少し休憩を挟むから、次のアナウンスがあれば、会場に戻るように!」
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