異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
三番勝負⑧
あれよあれよと言う間に、会場は剣道の試合会場へと変貌した。
並んだパイプ椅子を、高度な団体行動のようにさっと片付ける。
その統率のとれた那由多民の動きに私は唖然とした。
やっぱり普段から、有事の際の統率がとれてるんだね。
あ、でも当の指揮官はまだ御乱心のようですけど。
納得いかないらしい提督さんは、なんやかや御姉様に文句をつけていて、御姉様も大概ウザくなったのか、ケンカ越しになって怒鳴ったりしている。
そして、その姉弟喧嘩を少尉さんが必死で宥めているという地獄絵図……。
やれやれ、困ったものねぇ。
と、その間に私は道着と防具一式を借りて、裏で手早く着替えていたけど……そのあまりの臭いに倒れそうになっている。
そうそう思い出した、防具って臭いんだよね……。
この剣道独特の臭い。
何処にいても嗅ぎ分けられる剣士の香り。
あ、因みにどんなに綺麗なおねーさんも、イケメンのおにーさんも剣道の防具は臭いからね。
というのも、私も剣道二段を持っているから知っている。
本当はもっと上の段にも挑戦したかったけど、時間とお金がかかるし必要ない!って当主様に却下されたのよねぇ……。
それがなきゃ、もう一段上に行けたかも………。

「はぁ……それでは、両者、準備はいいか?」

あら、御姉様。
どうやら姉弟喧嘩は終わったようですが……疲れてません??
若干青い顔の御姉様は両サイドに別れた私達を見て言った。

「審判は、私と、冬島と結城が努める」

御姉様と少尉さんはわかるけど……結城って誰??
審判をするくらいだから、相当強いんだろうけど……。
と、私は視線を滑らせた。
御姉様と少尉さん………その横に居たのは、ピアノ対決の時の怖い軍人さんだった。
彼は私と目が合うと、更に恐ろしい目をして睨んでくる。
えぇ……私、何かした?でも、何かしたのはきっとすずなお嬢様だろうなぁ……。
もう、何なんだよぉ!怖いよ!
と、私はブルッと震えた。
武者震いじゃないよ、マジ震いです!
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