異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
甲板にて
ーーーーポーン。

と、軽い音がして、エレベーターが着いた。
さっきの会話の後から、私と提督さんの間には微妙な空気が漂っていて、どちらも何も喋らない。
この微妙な空気を作ってしまったのは私なんだけど……それを打開するいい案はなかなか思いつかなかった。
なんとかしなければ、初デートが楽しくない……。
そう思い始めた私の目の前に、あり得ない景色が飛び込んできた。
ゆっくりと開いた銀色の扉の向こうには、どこまでも広い緑の草原に青い空。
吹き抜ける風が草を揺らし、海風は地平線の彼方へとゆったりと流れていく。

「これは………」

見ることの出来ないと思っていた風景がそこにはあった。

「芝生を植えているんだ。これは改良された芝生と土で、半永久的に枯れない」

「歩いてみてもいいですか?」

「ああ、でも、気をつけてな。ここに柵はないから」

「はい」

エレベーターから一歩踏み出すと、懐かしい緑の匂いがふんわりと鼻をかすめる。
そして、また一歩一歩と踏み出すと、夜露を含んでいた芝生が私の足を濡らした。
そのまま暫く進んで辺りを見渡し、ぐるりと360度回って天を仰ぐ。
何日ぶりの太陽だろう。
こんなに太陽を懐かしく、有り難く感じるなんて初めてのことだ。
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