異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
概要は簡単に言うとこんなものだった。
ここに至るまでに、数々の殺戮や戦争が繰り返された記述があったけど、その部分は読み飛ばした。
それはかなり凄惨なもので、気分を鬱にしそうだったから。

私は教科書を伏せて目を閉じた。
目が疲れたわけじゃなかったけど、精神の疲労が結構酷い。
なんだか、バッドエンドの物語を一気読みしたようで気分も良くない。
一つボタンを掛け違えればこういったことになるんだとやるせない気持ちになる。
だけど、これがこの世界の人にとっては本来の歴史で真実なんだ。
最悪の未来を辿ったパラレルワールド。
それがこの世界の真実。


私がベッドに突っ伏して、何も考えないようにしていると、不意に扉がノックされた。
提督さん?でも、仕事で暫く来れないって言ってた。
誰だろう、フレディかな?

「はーい」

小さく返事をすると、扉はゆっくりと探るように開き、入って来たのはさっき朝食を持ってきてくれた王子だった。

「ご気分はいかがですか?」

おや?あら?あらら?
最初見たときと印象が違うのは気のせい?
あんなに『いないもの』として扱っていた私にとても爽やかに笑い掛けてくれてますけどー。
一体どうしたの!?

「とてもいいです。皆さんにもご迷惑をおかけしました。助けてくれてどうもありがとうございます」

というと、王子は更に目を細めブンブンと首を横に振った。

「とんでもない!ご用があれば何でも言ってくださいね。あ、昼食をお持ちしたいのですがもう食べ………」

ぐぅぅーー。
……………私の腹!!先に返事をするんじゃありません!

「ふふっ……わかりました。今すぐお持ちします」

「スミマセン………」

王子は苦笑いしながら扉に向かい、突然何かを思い出したように振り返って言った。
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