異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
艦内探訪、少尉さんと一緒!
少尉さんに靴を借りて、私は記念すべき第一歩を踏み出した。
と言っても、提督さんの部屋から初めて出るというだけなんだけど。
少尉さんに聞いた話によると、この部屋は提督さんの部屋でブリッジに程近い上層階にある。
他の部屋よりは大きめで、家族若しくは夫婦で住めるようにしてあるということだった。
すずなお嬢様も、ここに住む予定だったそうだけど、部屋にはほとんどいつかなかったらしい。
ワンピースはいっぱい置いてあったのにねー。

提督さんの部屋を出て、一つ下の階に降りると、そこは上級士官さんの部屋があるフロア。
全てワンルームになっていて、少尉さんもここに住んでいる。
上級士官さんの部屋は下士官さんの部屋より若干広いらしい。
そして、浴槽もついている。
下士官さんの部屋にはシャワーしかないんだって……。
うぅ、それは辛い!!

私達はもう一つ階段を降りる。
そこは学者、医者、研究者といういわゆるブレーン的な人達の住むフロア。
そう、フレディの部屋もこの階にある。
少尉さんは303のプレートを見てドアを軽く叩いた。
…………返事はない。
どうやら部屋にはいないみたい。

「ここにいないとなると、診療所ですね」

「あ、仕事中?診療所はどのフロア??」

私は少尉さんにもらった『那由多・フロアガイド』を見て、3階フロアから下に視線を落とす。
診療所、診療所……と目で追うと、5階フロアのど真ん中に大きく診療所と書いてある。
さすが、戦艦島の診療所、規模が大きい!
少尉さんと一緒に、4階(下士官部屋・2人一部屋)を抜け5階へ移動する。
すると、階段を降りてすぐの所に、診療所の待合室があった。
待合室には老若男女、様々な人達がいていろんなことをしながら順番を待っている。
少尉さんと私が待合室を抜けていくと、険しい視線がチクチクと突き刺さった。
どうしてだろう?
と首を傾げると、近くで囁くような陰口が聞こえてくる。

(あの女、生きてたんだ……)

(ほんとだ、なんで?)

(せっかくいなくなったと思ったのにねぇ)

………そうか、そうだったわ。
私の顔、すずなお嬢様そっくりだったんだ。
それにしてもすごい嫌われよう……。
フレディは軍部に嫌われてるって言ってたけど、住民の皆様にもかなり嫌われてるよ!
私は初めて感じる嫌悪感剥き出しの視線に戸惑い俯いた。
それを見た少尉さんは、住民と私の間に入り視線を遮り言った。
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