異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
やがて提督さんが顔を上げた時、私は少し醒めてしまったお茶を啜りながら、デザートに付いていたクッキーを頬張っていた。

「ふふっ……」

「何です??」

酷い、いきなり人の顔を見て笑うなんて!
と、憤慨したけど次に提督さんがとった行動にビックリして、心臓が跳ねた。

「ついてるぞ」

そう言って、提督さんは長くしなやかな指をスッと私の頬に伸ばし……。
口の端についていただろうクッキーの食べかすを、摘まんで自分の口に運んだのだ!
天然なのかな?……こういうこと自然にやっちゃうって、ほんと、たちが悪い。

「すみません……美味しくって、ついがっついちゃって、あはは……」

あはは、じゃないよ、私!
でもクッキーが美味しいのは本当。
甘いもの最高!!

「オレのも食べろ、甘いものは苦手だ」

あら、もったいない。
では遠慮なく。

「ありがとうございます!!」

そして、私は本当に何の躊躇もすることなく、提督さんのクッキーを横取り……慎んで頂いた。
私がクッキーを頬張る様子を、楽しそうに見つめる提督さん。
静かな部屋の中には、クッキーが砕かれる音だけが響いていて、何だかすごくシュールだ。
ゴリュ、ゴリュ、ゴリュ。
と、可愛くない音が響く中、笑って見ていた提督さんは身を乗り出し、両肘を付いて指を組む。
そこにゆっくり顎を乗せ、少し近い距離で私をマジマジと凝視した。
ゴリュ。ゴクン……。
もう可愛くない音さえも聞こえなくなって、部屋はシーンと静まり返った。

< 42 / 188 >

この作品をシェア

pagetop