異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
午前6時、漕ぎ手の4人と、補佐の奏太が待つ神船に乗り込むと、海神祭は厳かに始まる。
沖へ向かって進む船の舳先に移動し、奏太から神楽鈴を受けとると、咲夜が船の横から姿を現し、待ってました!とばかりに大きく跳ねた。

シャン…………シャン……………

最初はゆっくりと。

シャン……シャン………シャン………

鈴に合わせて袖を揺らせ、咲夜が跳ねる水飛沫の中をひたすら神に祈りながら舞う。

シャン、シャン、シャン。

ただ、島の平和を願って、豊穣を願って………(でも、私の願いは?)

シャン、シャン、シャンシャン………

(私の願いはどうなるの?私だって……私だって……)

鈴の音、揺れる水面、跳ねる水飛沫。
次第にトランス状態に入り込み、自分の精神状態がコントロール出来なくなってくると、聞こえていた鈴の音が聞こえなくなり、代わりに低く静かな声が頭に響いてくる。

『お前に自由を与えよう。失われ行く世界の末を見届けるがいい』

…………………………誰?
誰の声?この世の物とも思えない低く恐ろしい声。
これは……これは、人が触れてはいけないものだ!
本能的に呼び起こされた恐怖心が、私の正気を取り戻させた。
< 6 / 188 >

この作品をシェア

pagetop