異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
素敵な少尉さん
「お疲れ様です、お嬢様!」

と、今日も定時きっかり5分前、お迎えに来た少尉さんが私に声をかけた。
ここ最近、少尉さんと提督さんは1日交代で迎えに来てくれている。
あ、提督さんは朝礼があるから、行きはいつも少尉さんなんですよ。
そして、たまーにフレディが健康診断と称して保育ルームにやって来る。
定時までいて、その後私を送ってくれるのだけど、なぜだか途中で絶対提督さんが待ち構えている。
道の真ん中で腕を組んで仁王立ち。
初めて見たときは、果し合いに来たのかなと思いましたよ!
昔の不良漫画そのものだもん。
結局3人で帰ることになるんだけど、ほんとに周りの目を集めるからやめてほしい。
ただでさえビッチと呼ばれてるのに、こんなの見られたら「ほら、また男と揉めてる!」ってことになるじゃない!?
わかってないのよねぇ、私の立場ってものを。

「今日もありがとう。少尉さん!あ、そうだ、これね、今日みんなで作ったの、食べて」

「おや、クッキーですか?それはありがたい。頂きます」

少尉さんはその場でクッキーをかじり、じっと様子を見つめる子供達に麗しい微笑みを向けた。

「これは旨い!!一体どこのシェフの一品だろう!」

その声を聞いて、子供達の笑顔は弾けた。
さすが少尉さん!!
提督さんではこうはいかない。
最初に怒られてるから、見られるだけで泣き出すのよね……。

「そうでしょう!サキシェフと、りょうシェフと、ひろとシェフが腕によりをかけて作ったんだものねっ!!」

そう言うと、皆真っ赤になって、私の後ろに隠れたりもじもじしたりして。
もうね、天使かっ!?
っていうくらいかわいい!
いいな、子供、早く欲しいなぁ……。
あ、ダメだ………相手がいないや……。

そんな妄想を繰り広げていると、御姉様がやって来て「定時だぞー」と声をかけてくれる。
クッキーに夢中な子供達を他の先生に任せて、私はそっと少尉さんと保育ルームを後にした。
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