異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
元カノでしたか
次の日、お迎えの少尉さんにハリウッド女優……じゃなかった「大原雪江」の素性を尋ねた私は、すぐに聞くんじゃなかったと後悔した。
だってね「元カノ」だって。
すずなお嬢様と婚約する前、幼馴染だった二人は2年ほどお付き合いをしていたらしい。
えーと、提督さんが今25歳で、お嬢様と婚約したのが一年前で24歳。
それから2年遡って、22歳のころかな?
もとの世界で言うと、大学生位のときの彼女なわけね。
特に何の問題もなく、普通にお付き合いしてたのに、上司の娘といきなり婚約した挙げ句「別れてくれ」の一言で済まされたとか。
当時、少尉さん達もこれは酷いと提督さんに迫ったらしいけど、提督さんは何も言わなかったらしい。
それだけ聞くとかなり酷い男だよね。
だけど、これには本当は理由があって、百瀬大将の余命が僅かだったことでどうか娘を頼むと懇願されたんだとか。
恩ある上司に言われたらね、提督さんはたぶん断れない。
大原さんを愛してたとしても、言わずに別れちゃうんだろうな。
そういう人だよ。
毎日一緒にいるから、そういうとこわかっちゃうんだよね。
真面目で、義に厚く、芯が強くて、情け深い。
そして、言葉が足りないんだ。
………あれ?誰かに似てるな。
誰だっけ?

「お嬢様。気をつけて下さいね」

「へ?何が?何に?」

ごめん、少尉さん、聞いてなかった。

「大原様ですよ。あの方は未だに提督のことを思っているようです。すずなさんと婚約してからも絶対あの二人は別れるって周りに言ってたみたいですし、男と逃げた件で、提督がすずなさんに腹を立てて、婚約破棄すると思っていたようで……」

ところがそうはならなかったから……。

「何かされると思う??」

少尉さんは腕を組んだまま、チラリと私を見た。

「しますね」

即答!?
でも、私もそう思うよ。
昨日の帰り際に言った言葉が、耳にこびりついてる。
今日、来るんだろうな……イヤだな、ずる休みしようかな……。
無理だ、私、学校はずっと皆勤賞だったし、島なんてどこに逃げてもバレるから逃げたことなんてない。
そう、逃げることを知らない女なのだ!
と格好良く言ってみたけど、くそ真面目なだけです。はい。
斯くして、逃げることを知らない私は、今日もちゃんと学園にやって来たのでした………。
< 82 / 188 >

この作品をシェア

pagetop