異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
ホームシックは突然に
その日は、朝から館内放送があった。

『おはようございます。皆様。私、楸鶫でございます。今日、午前10時より楸学園におきまして恒例の文化祭を開催致しますので、皆様お誘い合わせの上ご来園下さいませ』

と、一旦終わると見せかけてからの。

『なお!!本日のメインイベント、《楸提督争奪戦、三番勝負》は午後12時ちょうどから!午後12時ちょうどからになりますので是非ご来園下さい!!』

必死だなぁ……御姉様……。
そろそろ怒られるよー?

『ご来園される方はどうか御寄付も宜しく………は?いや、まだ……言うことがあ………ちょっと……こら、あ』

ブツッーーー、ピーーーガーー……。
…………………………。
あー、とうとう強制終了。
部屋で朝食をとっていた提督さんと私は……黙ったまま顔を見合わせた。
蒼白な顔の提督さんは、この世の終わりのように箸を震わせ、私はおもしろ過ぎて箸を震わせた。
だけど、私ももし身内がこういうことをやらかしたら他人事じゃないかもしれない。
今の提督さんのように蒼白になるだろうね、きっと。

「何をやっているんだ!」

提督さんは今度は真っ赤になって叫んだ。

「御姉様も資金集めに苦労されてるんじゃないですか?ほら、いろいろ経費も……ね……」

「まぁ、それはそうだが……」

提督さんは茶碗と箸を置き、何故かしゅっと姿勢を正した。

「今日は、頑張って……欲しい」

「はい?あ、はい。もちろん、頑張ります!全力を尽くします」

「ああ。頼む………本当に、心からな」

本当に、心から?
やけに念入りですね?
そこまで念を押されなくても、やりますよ!
すずなお嬢様のことを好きな提督さんの為に!!
うー、ちょっと不本意ではあるし、イラッとするし、モヤモヤもするけど……

「わかりました。結果はどうあれ、全力を尽くします!!」

そう言った私に、提督さんは萌える笑顔で向き合った。
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