SHALIMAR -愛の殿堂-



夜の仕事―――かぁ。


まぁそう言われてみればそうかもしれない。


あの黒に近い深い赤色のマニキュアとか、普通の職業じゃちょっとないよな??


何してる人なんだろう。


「今度お前んち行く!


“美しい隣人”を見に行く!仲間 由紀恵を見に行く!」


てか仲間 由紀恵じゃないし。ありゃドラマだろ??ってか似てないし…


吉住が意気込み、俺はそれを軽く受け流した。



―――…吉住じゃないが、『夜のお仕事』と聞いて俺はちょっと隣人のことが気になり始めた。


何せ俺の周りにはそういう職業の友人知人が居たことがないから。まったく別世界だ。



新学期もはじまり一ヶ月も過ぎると、その間に俺は隣人の生活を少しだけ知ることができた。


例えば、朝は大抵7時に目覚ましが鳴るとか。


帰りは遅くて、と言っても日が超えるぎりぎりってところか。


夜中の一時ぐらいに彼女がベランダに出て、数分…或いは数十分の間そこで何かをしているとか…


何でそんなことが分かるかって??


家賃¥60,000のマンションの壁はだてじゃない。ようは薄いってことだ。


そりゃもう某回転寿司チェーン店のネタのように。


マンションの階段を上り下りする音や、部屋の扉を開け閉めする音、ベランダの窓を開ける音―――


たまに彼女の喋り声も聞こえたりする。


と言っても聞こえるのは彼女の声だけで(内容はさすがに分からない)、他に誰かが来ている様子はない。


電話でもしてるんだろうな。


言っておくが、決して聞き耳立ててるわけじゃないぞ!


聞こえてくるんだ!





煩いとか耳障りとかじゃないけど、何となく―――…気になる。






< 11 / 101 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop