先輩に一目惚れしたんで、サイエンス部に入部します!
その静寂を破ったのは、星野先輩のスマホに電話がかかってきた時だった。俺と友永は、びくりと同時に肩を震わせた。

「わっ!ごめん!ちょっと出るね」

星野先輩が、コートのポケットからスマホを取り出す。しかし、スマホを落としてしまった。

スマホに浮かぶかけてきている相手ーーー何気なく見たその名前に、俺と友永は「えっ!?」と同時にハモる。普段なら嫌だが、今回は驚きの方が強すぎてそれどころじゃない。

「♡行光くん♡」とそこには書かれている。

行光(ゆきみつ)ってたしか、杉田先生の名前……。

俺と友永が呆然としている中、星野先輩は震える手で電話をとる。しかし、どうやらスピーカーモードになっていたらしい。すぐに星野先輩は耳を離した。

「優愛、いつ帰ってくるん?あんまり遅いと心配やし、俺が迎えに行ったるよ?」

普段、生徒のことを苗字でしか呼ばない杉田先生が、星野先輩を名前で呼んでる…。

「やっぱり心配やし、天体観測終わる頃になったらもう一回電話して!未来のお嫁さんになんかあったら、俺、生きてけへんもん。冬休み中に結婚式の準備と新婚旅行の準備せなあかんし!せやで、ちゃんと電話かけてくるんやで。電話かけへんかったら、罰として一週間甘いものナシやでな〜」

そう言って、電話が切れる。えっ……マジどういうことっすか?

俺と友永は、目で星野先輩に説明を求める。星野先輩は真っ青な顔になりながら言った。

「ほんとにごめんなさい!実は、私と行光くん…じゃなくて杉田先生は、幼なじみで私が中学生の頃から付き合ってるの。私が高校を卒業したら結婚しようって話をしてて…。ほんとにごめんなさい!」
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