アブナイ王子様たち

唇に、恋の媚薬


「あー、落ち着くわー」


家から歩いて10分ほどの距離にある、ショッピングモールの中にて。


私と翔さんは、1階のフードコートに来ており、休憩している。


フードコートの空いている席に座った直後に、翔さんが発したのが、冒頭のセリフだ。


「意外ですね」


「なにが?」


「翔さんが、こういうにぎやかなところが落ち着くなんて。


私のイメージでは、静かなところで本を読むって感じだったんですけど」


「どんなイメージだよ。


てか、真面目くんか、俺は」


翔さんがやわらかな笑みを浮かべる。


なぜ今、翔さんが意地悪なことを言ってこないのか私はわかっている。


意地悪なことを言うときではないから。


気味の悪い手紙を送った人に、彼氏がいて、イチャイチャしているというシーンを見せるためだ。
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