アブナイ王子様たち

アブナイ王子の甘い毒


「あー、暑い……」


セミがしきりに鳴くある日。


キッチンにあるテーブルを濡らした布巾でふきながら、額に浮かんだ大粒の汗をぬぐったとき、誰かが階段を下りる音が聞こえた。


はっとして、階段のほうに駆け寄る。


数秒後、足音の主が私の視界に現れた。


「うーん……」


「し、翔さん」


足音の主は、なにかを考えるような表情でうつむいている翔さんだった。


いつもなら、私に意地悪なことを言ってくるのに、今日はいったいどうしたんだろう。


気になったので、聞いてみることにした。


「……なにしてるんですか?」


その直後、やっとで私に気づいた翔さんが、床を見つめはじめた。


「じつは俺、自分のピアスなくしたんだ」


えっ⁉︎


自分のピアスをなくした⁉︎
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