我が儘社長と不器用な2回目の恋を



 声がした後方へ振り返ると、そこに白のジャージ姿の斎が駆け寄ってくる所だった。
 先程まで試合をしていたというのに全く疲れた様子もなく、颯爽とこちらに向かって走ってきていた。


 「斎………。」
 「やっぱり夕映だったな。久しぶりだな。」
 「うん………。小学生のパーティー以来だね。」


 久しぶりという事もあり、お互いに少しだけぎくしゃくした挨拶を交わした。
 夕映はずっと話したくて仕方がなかった彼が目の前にいるのに、なかなか顔も見ることが出来なかった。
 

 「おまえ、変わってないな。」
 「そう、かな。これでも身長は高い方だよ?」
 「それは俺を見てから言え。」
 「え…………。」


 そう言われて、気恥ずかしさもありながらもゆっくりと彼に視線を向ける。
 彼はとても大人っぽい顔つきになって、そして男らしさが増していた。切れ長の目はとても色っぽく、そして、すこし長くなった髪がとてもよく似合っていた。銀色の髪は、夕日の赤色に染まりながら赤く光っていた。

 惚れ惚れとしながら、彼を見ているうちに自分が彼を見上げていることに気づいた。
 数年前までは、あまり身長は変わらなかったはずだ。


 「すごい………大きくなったね。」
 「気づくの遅すぎだ。」
 「だって、まさか斎と話せると思ってなかったか、驚いちゃって。私がテニスやってるの話してなかったし……。」
 「何回か会場で見たぞ。それにおまえだって入賞してるだろ。」
 「え…………。」


 斎が自分を見てくれていた事に夕映は驚いた。中学からテニスを始めたばかりの夕映だったが、合っていたのか試合に出ると入賞することが多く、今回の試合では個人戦で3位にまで上がることが出来たのだ。
 それを彼が見ていてくれた。それだけでも、夕映は幸せだった。



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