我が儘社長と不器用な2回目の恋を



 この日、夕映は九条の家に遊びに来ていた。
 今日は斎のご両親も神楽もいないため、数人の使用人しかいないという事だった。少し前まで、斎も一緒にいたのだが、会社からの呼び出しがあり、「ちょっと出てくる。すぐに帰ってくる。」と、夕映の額にキスを落としてから、すぐに車で出掛けてしまった。

 それから夕映の大好きな本の部屋で一人過ごしていたのだ。
 部屋の中央にあるふわふわのソファ。そこに丸くなりながら本を読んでいた。けれど、先ほどから妙に集中出来ないのだ。

 原因はすぐにわかっていた。


 先ほどから、彼の香りが夕映を包んでいる。青葉の香りと柑橘系のさっぱりとした香り。
 このソファについてしまった香りなのだと夕映は思っていた。けれども、そうではなかったのだ。先ほど、ソファから立ち上がり本棚を見てあるいた時にもふわりと香ったのだ。どうしてなのか。答えは簡単だった。
 夕映に彼の香りが移っているのだ。
 
 それがわかった瞬間に、恥ずかしくも幸せな気持ちになった。
 自分から彼の香りがする。先ほどまで、ずっとくっついていたからだと思いだし、照れながらも、すでに彼が恋しくなってしまうのだ。


 「なんだか、斎を知れば知るほど好きになっていくなぁー。」


 夕映は、ソファに体を倒しながら、持っていた本を抱き締める。
 彼の優しい香りも一緒に包んでいるようで、夕映は思わず顔がほころんでしまう。


 「早く帰ってきてね。」


 そう呟いて目を瞑ると、夕映はあっという間にうとうとして寝てしまったのだった。


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