普通な狂人

仕上げ





散々イカせた後耳を塞いだ。


終わってから少し待っていると依頼者が来た。



「ん?殺しはしていないのか?」



「…仕上げておりますのでどうぞごゆっくり。」



「ぉお!そうかそうか…!

やはり狂人に依頼して正解だったな!

ほら、報酬だ!色もつけておこう!」



でっぷりと蓄えた贅肉を揺らし、汚く笑う。



「ありがとうございます。

では私はこれで。」



俺の言葉を待たず豚は部屋に入っていった。




「…脳のない豚どもめ。

いい声で鳴いて死ね。」


俺は小屋から少し離れると静かにスイッチを押した。


「な、なんだ…っ、何故火が!

あつっ、熱いっ!ドア!なんで!開かない!嫌だっ!死にたくない!狂人!助けろ!狂人!開けろ!」



「きゃぁぁぁぁ!いやだぁっ!ごめんなさい!もうしない!しないから!お願い!助けて!」




まだだ。まだ綺麗じゃない。

もっと、死に近い声を…




「あっ、あっ、あっ、あぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁ…」


「いやぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁ!!

ごめん…っ、な…さっ、」



それを最後に声は聞こえなくなった。


最後は喉も焼けていたのだろう、ひゅーひゅーという音が聞こえた。



あぁ、ゾクゾクする。


だんだんと弱るのが声でわかった。


喉が焼けていてもなお声を出し助けを呼ぶ。


でも何度呼ぼうがどんな大きな声だろうが、それは届かい。


そして死ぬ直前。

助からないとわかると絶望する。


人はそんな時いちばん綺麗な声を出す。





あぁ、良い依頼だったよ。


その前準備はめんどくさかったが、その価値を上回る鳴き声が聴けた。


この方法はまた使おう。









さて、次はどんな死に方を見せてくれるかな。



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